民法 基本原則

事情変更の原則とは

民法の基本原則は(民1)
1.公共の福祉に適合する事
2.信義則
3.権利の濫用の禁止
です。
公共の福祉及び権利の濫用については日本国憲法に明記されています。
権利の濫用が適用された例としては、日照権阻害に係るものがあります(最判昭47.6.27)。
(不法に)増築した結果、隣家の日照・通風を阻害した事は権利の濫用であり、不法行為であるとの事です。
本件判決の2年前に北側斜線規制が立法されていますが、本件判決が影響したのか、それでも足りないといった感じで建基改正時(昭和52年施行)に日影規制が付加されたようです。

信義則については、そもそも私人同士の約束事(契約)の内容は自由である=契約自由の原則(同521)という概念があります。
ただ、相手方を騙すような形の契約はいけませんという趣旨と捉えて宅建の場合は問題ないでしょう。
この”騙す”には不作為も含まれます。契約前に、説明すべき事項についてだんまりを決め込み、締結に至った等が該当します。
説明すべき事項とは、相手方が契約前にその事実を知っていたならこの契約はしなかっただろうといった重要な事項の事です。
瑕疵等について事前に知らせた上で相手方がそれでいいというなら、契約自由の原則という事になるでしょう。
契約内容について、言った・聞いてない等、後から争いに発展するのを防ぐために重説というものがあります。

さて、原則に回帰と言いますか、深堀り目的で判例六法の民1を読むと、”事情変更の原則”というものが記載されていました。
なんじゃらほい。ゴルフ会員権に係る判例に紐づけられており(最判平9.7.1)、判例100選に載ってました。(kindle版民法判例百選総則第8版別冊ジュリスト40)
最高裁ウェブサイトの判例はその判例しかわかりませんが、判例百選は大抵第一審and/or原審の概要等まで記載しており、提訴に至った経緯や人間関係等が格段に把握しやすく、 学説も載ってます。

原告がゴルフ会員契約を締結していたところ、そのゴルフ場の法面が崩壊し、大規模修繕をしなければ営業不可となりました。
原告の会員としての権利は一体どうなってしまうのでしょうという内容です。
事情変更の原則が適用される要件として
・その事情変更が当事者にとって予見できないものであった
・当事者に帰責しない事由によって生じた
かつ、上記各号は契約締結当時の契約当事者について判断されるという事のようです。
本件においては、原審は、契約当時から当該ゴルフ場の経営者は変わっているのに契約当時のゴルフ場経営者についての法面崩壊予見性について
何ら検討していないという理由で破棄自判してます。事情変更の原則は適用されませんでした。

宅建業という見地から注目すべき箇所は、”ゴルフ場経営会社が自然の地形に形質変更をしたのだから法面崩壊が予見不可能であったとは言えない”との判示です。
宅造特盛法が頭に浮かんできます。
なお、ゴルフ場は都市計画法でいうところの第二種特定工作物ですね。ゴルフコース(法4-11)以外の、政令に記載された野球場や競技場等の第二種特定工作物については規模1万㎡以上となってます。(令1-2)

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