建物賃貸借における民法と借地借家法

身につけても使わないと退化していくので復習です

前述の通り、不動産の賃貸借契約という約束事のほとんどは借地借家法(以下「借家法」)が適用されます。
開業までの復習がてら、民法と借家法の違いについて思い出すことにします。

・第三者への対抗力具備要件は、民法=登記(民605)、借家法=引渡(借家31)である。
・建物の賃貸借期間は、民法=最長3年(民602)、借家法=最短1年以上(借家29)である。(例外有)
・期間の定めの無い同契約の解約申入は、民法=各当事者3か月以上前の予告(民617)、
                   借家法=賃貸人からは6か月以上かつ正当事由(借家27)、賃借人からは3か月以上(民617)
・造作買取請求権が民法上は具体的規定がなく、借家法にはある(借家33)。
家賃増減請求権が民法上は具体的規定がなく、借家法にはある(借家32)。(滅失を除く)

大雑把に言うとこんな感じでしょうか。
ところで、”家賃増減請求権”についてですが、宅建士試験の勉強をするにおいて
定期建物契約以外のいわゆる普通借家契約において家賃不減額特約は無効であると漠然と学習したのですが、
今改めて六法を読んでみるとはてなマークが浮かびます。
強行規定についてですが、まず借家30においては”この節”とあるので、26~29を指していると考えて問題ないでしょう。
次に、37においては、”31、34、35″は強行規定である旨を明記しています。あれ?
という事は、32(家賃増減請求権)は強行規定というわけではないと解釈できます。
何度も32-1を読んだ結果、不増額特約がある時はその定めに従うが、不減額特約については
あくまでも租税その他の負担の・・という状態になって初めて争えと。初めから決めつけ(特約)は駄目ってことでしょうか。
造作買取請求権も強行規定ではありませんので特約で打ち消しておくことが
両者にとってあと腐れがないと考えます。
定期建物契約については、38-9において借賃改定特約がある時はそれに従えと明記されています。
つまり不減額特約も有効であるという解釈が成立します。

空気のような雰囲気を醸し出している民法の賃貸借契約に係る条項は必要なのか?と考えるのも不思議ではありません。
が、”一時使用目的”の建物賃貸借契約には借家法が適用されません。(借家40)
単身赴任で半年だけそっちで暮らすからその間だけ貸してくれっていう場合等でしょうか。
借家法が適用されず、民法がこの”一時使用目的の建物賃貸借契約”に対する適用法令となります。
では”一時使用”とは一体どのような状況をもってそう判断するのかというと、
ケースバイケースという言葉が最も適格だと考えます。

建物賃貸借はまだマシです。”一時使用目的の借地権”(借家25)はもっと複雑です。
一時的に資材置き場とするために土地を借りたという場合は民法が適用されます。
が、その一時使用目的の土地上に工事現場の事務所や興行用臨時建物等を建てると若干借家法が適用されます。
例:地代増減請求権
めんd いや何でもありません。

参考判例
・一時使用の(土地)賃貸借と認めるためには、その賃貸借期間は、借地法(現借家法)が定める借地権の存続期間よりは
相当短いものである事を要し、右存続期間に達するようなものは一時使用とは言えない。(最判昭45.7.21)
・一時使用(建物)とは、賃貸借の目的、動機その他諸般の事情から、その賃貸借を短期に限り存続させる趣旨のもので
あることが客観的に判断されるものであればよく、必ずしもその期間の長短だけを標準として決せられるものではなく
期間が1年未満でなければならないものでもない。(最判昭36.10.10)
*判例等の大半は有斐閣の判例六法から引用・参照しています

ところで、旧借地法から現借地借家法に変わった(施行された)のが1992年です。
それまでに借地契約をし、更新更新でやってきた契約にはなお従前の法律が適用されます。
やれ堅固だ朽廃だというやつです。そして大半の借地契約はなお従前によりますので、
旧借地法にも目を通していて当然であると考えます。

借家法 附則6
この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新は、なお従前の例による。

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